胃腸炎(嘔吐、下痢)

今の時期に流行しているのは胃腸炎だ。
毎年この時期になるとノロウイルスが流行ったりして、ぼくらの救急外来では点滴をぶら下げながら長椅子で横たわっている患者さんを多く見る。

ところで、胃腸炎の症状である嘔吐や下痢は「止めなければならない症状」ではない。

そもそも風邪などの症状は意味があって出ている。
例えば咳は気管に入った異物を排出しようとする体の自然の反応だ。
同じように、嘔吐や下痢は口から入った異物を体外に排出しようとする正常な反応である。
吐くことは辛いが少しでも体内に吸収されるのを阻むためにはもっとも効率がいい。
下痢は排出し切れなかった異物を少しでも早く体外に排出しようとしているので、これも「なかなか考えられているな」と感心してしまう。

それゆえ、胃腸炎における嘔吐や下痢の症状などは必ずしも止めなければならない症状ではない。
ただ、胃腸炎で特に問題になるのは「脱水」だ。
特に小児や高齢者では容易に脱水になりやすく、その為に嘔吐や下痢を止めるのも一つだが、上に述べたように体にとって悪いものを排出しようとする反応で、それは自然に任せた方が重症化を避けられたりすることもある。
病原性大腸菌感染なら速やかな菌の排出が望ましいからだ。
これらのことから、望ましい対応としては脱水の補正となる。

吐いているのに水分摂取はなかなか難しい。
30分だけでも吐かなければ多少は吸収されるだろうが、それでもなかなか取れたものではない。
たいていの激しい症状は1日経てば落ち着くことが多いから、成人であれば1日我慢すれば乗り切れるかもしれない。
しかし、お年寄りや乳幼児などになれば容易に脱水に陥りやすいため、場合によっては補液が望ましい。
経口補水薬や補水液を飲めなければ輸液(点滴)をするしかない。

とにかく、脱水補正が重要であるため、水分が取れていなかったり、1日に2回程度しか排尿がなかったり、と脱水を示唆する症状があれば、医療機関の受診をお勧めする。

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