かつて一緒に研修をした同期のやつが、色んな紆余曲折を経て、今はとある救命センターに勤めている。
今まで民間病院で働いてきた彼にとっては初めての公的医療機関だが、
そんな違いが医療に対する体制の違いとして見られたりする。
例えば、看護師の点滴ルート確保や経静脈的薬剤投与は公的医療機関ではご法度だ。
大学病院でもそうだが、病棟での点滴や薬剤の投与はすべて研修医の仕事だったりする。
同じようなことが、彼が勤めだした病院でもあるようで、
ひどい場合には、救急搬送された患者のバイタル(脈拍や血圧、血中酸素飽和度など患者の状態を把握するための数値)さえ取ろうとしないらしい。
そんな環境の違いから、彼は鬱っぽくなって電話をよこしてきた。
彼も転勤したばかりで色々カルチャーショックがあるようだ。
「近いうちに飲みに行こう」
そう言って電話を切った。
彼はこれから数年はそこで頑張るつもりらしい。
どちらかと言うと俺様的な彼は、かつて一緒に働いていた時も色々衝突をしていた。
今までにないほど医者として働きにくい環境で彼が何年か過ごすことができたら、きっと彼にとっても大きな成長の証として残るだろう。
やりにくいだろうが、頑張ってもらいたいところだ。