静岡の僻地の現状

何年か前に行政の財政破綻により身売りに出されたこの病院。どこも引き取ってくれなかったのか、民間の巨大医療グループに経営が託された。その結果、病院の職員は半分以下にまで激減。
それでも、少ないマンパワーにも関わらず地域の医療を担う使命感を持ったスタッフたちにより、この病院と地域の医療は守られている。

そこに応援に行っているのが僕らER医。毎週日曜日を除き、週替わりで応援に行くようにしている。
基本的な勤務時間は、12時〜21時の9時間。実質にはさらに引きずって仕事してたりするから11時間前後であったりする。

今日は、高齢女性の交通事故が搬送された。
頭から腹の中まで損傷があり、最初はこの病院の外科で入院させて診る予定だったが、フォローのCTで受診時よりも損傷がひどくなっていることが判明し、転送することになった。

近隣の病院(と言っても救急車で20分程度かかる)に電話したが悉く断られた。
3番目にかけた病院の医師からは「どうしてもどこも取ってくれなかったら引き受けるが、僕ら(二次医療機関)に依頼するより、そういう患者は三次医療機関に依頼する方が良いんじゃないか?」とアドバイスを貰い、静岡市の病院にかけてみることにした。
しかし、静岡市の救命センターの一つにかけると「うちも手一杯なんだ。今日の外科当番にかけた?まずはそこに当たってよ」とあっさり断られた。
その外科当番ってのは二次医療機関になる訳だけど、三次にそう言われてしまえば仕方ないから電話をかける。
電話したら、当直の先生は快く引き受けてくれた。

結局、三番目に問い合わせした際に受けたアドバイス通りにはならず、静岡市内の二次医療機関に搬送することになった訳だが、今の病院のマンパワーで何とかやってるところに比べれば断然いいスタッフに恵まれている。
#なによりここには脳神経外科医がいない…。
そう思って僕は救急車に一緒に乗って、静岡市までサイレンを鳴らしながら40分かけて患者を運んだ。

申し送りを終え、帰りの救急車内で隊員と雑談をしている中でこの地域の救急医療の実情を聞いた。
この病院に僕らER医がいる時はほとんど受けてくれるが、午前中や当直帯など、僕らがいない時間帯に是非受けて貰いたい傷病者を受けてもらえないことがあって、それが辛かったりする、と。
それがこの地域の現実だった。

今まで行って来た僻地の病院では、とりあえず救急患者は受けていた。その上で転送していたように思う。
しかし、この病院はやはり以前の行政病院の体質が残り「どんな患者でも受け入れる」ということはできずにいる。小児は断られ、当直医によっては多発外傷や脳卒中疑いは断られている。それがこの病院の実態だった。

その現実を哀しく思い、
「こういう病院ほど僕らER医のニーズがあるよな」と思いながらも、
ここに骨を埋められない立場にある自分を申し訳なく思ったりもした。

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